ゲーム・インターネット依存症とは
ゲームやインターネットが好きだったり、長く楽しむこと自体は問題ではありません。
しかし、「やめようとしてもやめられない」「生活が崩れてしまう」「本人や家族が困っている」という状態になると、心や生活に負担がかかっているサインです。
世界保健機関(WHO)でも、ゲームやインターネットの使用により、
- 日常生活や健康が損なわれる
- 学業・日常生活に大きな影響が出る
- 本人の意思では使用を調整できない
といった状態を「ゲーム障害」とし、早めの支援が大切だとしています。
どのような症状がみられる?
1. 使用時間がどんどん増える
- 勉強や家のことが手につかなくなるほど続けてしまう
- 「ここでやめよう」と決めてもつい続けてしまう
2. やめようとすると強いイライラや不安が出る
- ゲームを中断すると怒りが爆発してしまう
- 落ち着かず、他のことが手につかなくなる
3. 生活リズムが崩れる
- 夜中まで続けてしまい昼夜逆転する
- 食事・入浴など基本的な生活が乱れる
4. 学校生活や家庭生活に支障が出る
- 遅刻や欠席が増える
- 宿題や家庭学習ができなくなる
- 気が散りやすくなり、集中できない
5. ゲーム中心の生活になる
- 家族や友達との関わりが減る
- ゲーム以外の楽しみが見つからない
6. 身体への影響
- 頭痛、肩こり、目の疲れ
- 睡眠不足・体力低下
- 食生活の偏り
なぜ依存状態になるのか?(原因)
ゲームやインターネットは、短い時間で「楽しい」「もっとしたい」という気持ちを強く生み出しやすい特徴があります。
そのため、続ければ続けるほど脳が強い刺激を求めるようになり、やめにくくなっていきます。特に子どもや思春期の脳はまだ発達の途中で、感情のコントロールが難しい時期です。
次のような要因が重なると、依存状態になりやすくなります。
心理的な要因
- 元気が出ない・意欲がわかない
- 不安や緊張が強い
- 現実よりもゲームの世界のほうが安心できる
発達特性
- 注意がそれやすい
- 思いついたらすぐ行動したくなる
- 人づきあいが苦手
- 好きなことに深くのめり込みやすい
生活環境
- 夜更かしの習慣がある
- 家にひとりでいる時間が長い
- スマートフォンやゲームを自由に使える環境がある
診断はどのように行う?
ゲームの時間の長さだけで診断はしません。その子の生活全体を丁寧に見ながら判断していきます。
評価するポイント
- 日常生活で困っていることがあるか
- 家族・学校での様子の変化
- 睡眠や食事などの生活リズム
- ゲームをめぐるトラブルがあるか
- 不安・落ち込み・発達特性などの心の状態
必要に応じて心理検査や生活の聞き取りを行い、
- 依存状態なのか
- ストレスや発達特性が原因で一時的に使いすぎているのか
を丁寧に見極めていきます。
治療・支援について
ゲーム時間をただ減らすだけでは長続きしないことが多いと言われます。
大切なのは、
- なぜその子がゲームに頼らざるを得なかったのか
- 生活の中でなにが困りごとだったのか
1. 本人のストレス・不安への支援
- 気持ちの整理の仕方を一緒に練習
- 不安や落ち込みがある場合はその治療も行う
2. 生活リズムの立て直し
- 睡眠・食事・朝の行動の習慣づくり
- 夜のデバイス利用ルールを調整
- 家族と協力して無理のないスケジュール作り
3. 発達特性への支援
- 注意の向け方の練習
- 衝動性のコントロール
- 人間関係が苦手な子のための練習(ソーシャルスキル)
4. 家族支援
- 過度に叱る・取り上げる・力づくで止めるは逆効果
- 家族のルールを“揃える”ことが一番の効果
- 保護者だけで背負わず、相談できる場所をつくる
5. 学校との連携
- 日中の眠気・学習の遅れなどを共有
- 必要に応じて授業の調整や配慮
6. 医療的支援
依存そのものを治す薬はありません。ただし、不安・落ち込み・衝動性・睡眠の乱れが強い場合は、必要に応じて薬を併用することもあります。
病院では、まず 気持ちの整理やストレス対処を一緒に行い、心の負担を軽くするところから始めます。同時に、睡眠・食事・学校生活など生活の土台を整える支援を行い、無理なく立て直せるようサポートします。
また、発達特性への個別支援、学校との連携、同じ悩みを持つ子どもや家族同士がつながれる グループ支援など、ひとりで抱え込まなくてよい環境を整えていきます。お子さんのペースに合わせて、一緒に「できること」を増やしていきますので、安心してご相談ください。
家庭でできるサポート
- 気になる行動をすぐ否定せず、落ち着いて話し合える関係をつくる
- 家族全員が守れるシンプルなルールを決める
- ゲーム以外の楽しみを一緒に探してみる
- 散歩・料理・手伝いなど、画面を使わない時間を増やす
- 「完全に禁止」より、「使い方を整える」ほうがうまくいきやすい
どのタイミングで相談すべき?
次のような場合は、医療機関への相談をおすすめします。
- やめられず生活が崩れている
- 夜更かしが続き、朝起きられない
- 怒りっぽさ・暴言・暴力が増えている
- 学校に行けなくなってきた
- 家族トラブルが増えている
- 本人が「やめたいのにやめられない」と苦しんでいる
早めの相談は回復の近道になります。
よくある質問(Q&A)
単にゲームが好きなだけではありませんか?
好きなだけでは問題になりません。しかし、
- やめたいのにやめられない
- 生活が乱れる
- 家族が困っている
- 本人がつらそう
といった場合は、依存症としての支援が必要になることがあります。
1日の利用時間が長いと、すぐに依存症になりますか?
時間の長さだけでは判断できません。大切なのは「生活が保てているか」です。
ゲームを取り上げても治りますか?
急な取り上げは逆効果のことが多いです。怒りやパニックが強くなり、隠れて使うようになることもあります。大切なのは、
- なぜ使いすぎてしまうのか
- 生活リズムの立て直し
- 一貫したルールづくり
です。
本人が「やめたいけどやめられない」と言っています。どうすれば?
とても大事なサインです。本人だけで調整するのは難しいため、早めの相談が役立ちます。
親が厳しければ治りますか?
厳しさだけでは改善しません。叱責や取り上げは、かえって悪化させることがあります。
発達障害との関係はありますか?
関係があります。注意がそれやすい・衝動的・人づきあいが苦手などの特性があると、のめり込みやすく、切り替えも難しくなりがちです。そのため、背景の特性に合わせた支援がとても役立ちます。
どんな治療をするのですか?
ゲームを禁止するのではなく、生活全体を整える支援を行います。薬は必要な場合に限り補助的に使います。
何歳から相談できますか?
小学生から高校生まで、年齢に関わらず相談できます。早めの相談が改善につながります。
どんなタイミングで受診したらいいですか?
次のようなサインがあれば受診をおすすめします。
- 朝起きられず学校へ行けない
- 昼夜逆転
- 家族への暴言・怒りが増えた
- 取り上げようとするとパニックになる
- 本人が「自分ではやめられない」と感じている
