小児のストレス障害・適応反応症について
子どもは、経験がまだ少なく、トラブルへの対処や気持ちの整理がむずかしいため、大人よりも心が影響を受けやすいものです。そのため、環境の変化や人間関係のトラブル、学校での出来事などが強い負担になることがあります。
そのため、ストレスが一定の範囲を超えると、気持ちの落ち込み・不安・身体症状・行動の変化としてあらわれることがあります。これらは「わがまま」「怠け」「反抗」と誤解されやすいですが、実際には 心が受け止めきれない負担がかかったときに生じる、自然な反応です。
小児では、大人のように「つらい」「不安だ」と言語化できないため、身体症状・学習の低下・不登校・強いこだわり・突然の涙や怒り といった形で見えることが多いのが特徴です。
適応反応症
適応反応症は、生活環境の変化やストレス(学校・友人関係・いじめ・家族の変化など)にうまく適応できず、心や体に症状が出る状態です。ストレスとなる出来事がはっきりしていることが多く、
- 新学期・進級
- クラス替え
- 受験・テスト
- 友人関係のトラブル
- いじめ
- 引越し・家族の変化
などをきっかけに出現します。
小児のストレス障害にみられる主な症状
気分の変化
- 悲しみ・落ち込み
- 不安・心配が止まらない
- 些細なことで涙が出る
- イライラ・怒りっぽさ
身体症状
子どもは心のつらさが“身体”に出ることが多くあります。
- 頭痛
- 腹痛
- 倦怠感
- 食欲低下
- 吐き気
- めまい
- 朝だけ体調不良が強い
行動の変化
- 登校しぶり・不登校
- 落ち着かない
- 勉強が手につかない
- 失敗を強く恐れる
- 泣きやすい
- 夜眠れない
学校での変化
- 成績の急激な低下
- 集中力が続かない
- 宿題ができなくなる
- 友だちと関われなくなる
ストレスがかかりやすい子の特徴
以下の傾向をもつ子どもは、ストレスの影響を強く受けやすいとされています。
真面目・頑張り屋
- 完璧を求めやすい
- 失敗を恐れやすい
不安が強い
- 予定変更が苦手
- 初めてのことに過敏
感覚が敏感
- 大きな音・にぎやかな環境が苦手
発達特性(自閉スペクトラム症や注意の特性)
- 人間関係のストレスが大きい
- 学校生活の刺激が負担になる
- 課題の量や切り替えが難しい
※ストレス障害は他の疾患と症状が重なることが多く、慎重な評価が必要です。
治療と支援
心理的支援
- 認知行動療法(ストレスへの対処法を学ぶ)
- 不安への介入
- 感情の整理と表現の練習
- ストレスマネジメント
- トラウマ性の出来事に対するケア(必要時)
学校・環境調整
- 休み時間の過ごし方の調整
- 教室の刺激量を減らす工夫
- 宿題量の調整
- 出席扱いの特例(保健室登校など)
- 本人のペースで学校に戻れる仕組みづくり
薬物療法
小児のストレス障害では、必要に応じて薬の処方を行いますが、心理支援・環境調整が中心となります。
ご家庭でできるサポート
- まずは本人のつらさを言葉で受け止める
- 「頑張りなさい」ではなく「どうしたら楽になるか」を一緒に考える
- 生活リズムを整える
- 休む必要があるときは無理をさせない
- 成功体験を少しずつ積み重ねる
- 学校と連携する
- 家族自身の疲れにも配慮する
よくある質問(FAQ)
甘えているだけではありませんか?
違います。ストレスや環境変化が心の許容量を超えたときに出る、医学的に説明できる反応です。
学校を休ませると癖になりませんか?
無理に登校させると悪化することがあります。段階的に「行ける形」を整えていくことが回復の近道です。
どの程度のストレスで診察を受けるべきですか?
お子さんの様子が通常の落ち込みや疲れとは違うと感じられる場合は、早めの相談が安心につながります。たとえば、以下のようなサインがあるときは、一度医療機関にご相談いただくことをおすすめします。
- 身体の不調(頭痛・腹痛・倦怠感など)が続いている
- 「学校に行きたくない」と言う日が増えた
- 朝になると身体が動かず登校がむずかしくなる
- 泣きやすくなったり、怒りっぽさが目立つようになった
- 学習や日常生活に支障が出ている
- 強い不安やパニック発作のような症状がみられる
無理に様子を見るよりも、早めに相談することで、安心して対処できる方法が見つかりやすくなります。
すぐに治りますか?
ストレス要因が軽減すると改善しやすいですが、心が回復するには時間が必要なことがあります。スモールステップで少しずつ整えていくことが大切です。
家族はどう関わればいいですか?
一番の支えは「理解してもらえる安心感」です。責めずに話を聞き、生活を整えるサポートが重要です。
