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反抗挑戦症(ODD)・素行症(CD)について

はじめに

反抗挑戦症(Oppositional Defiant Disorder)や素行症(Conduct Disorder)は、反抗的な態度や問題行動が“原因”ではなく、実は、気持ちをうまく整えられなかったり、不安やストレスが大きかったりすることでその“結果として”反抗に見える行動が出てしまう状態です。

「わがまま」「しつけの問題」「性格の問題」と誤解されることがありますが、実際には 情緒調整の弱さ、環境ストレス、発達特性、対人関係のつまずきなどが重なって起こります。

早期の理解と支援により、改善が十分に期待できる領域です。

反抗挑戦症(ODD)とは

反抗挑戦症は、怒り・反抗・挑発的態度が持続的に続き、家庭や学校で困りごとが生じている状態です。

主な特徴

  • すぐカッとなる/怒りが爆発する
  • 大人の指示・ルールに反抗する
  • 注意されると反発・言い返しが多い
  • わざと反抗的な態度を取ってしまう
  • 自分の失敗を他人のせいにしやすい
  • 些細なことでトラブルが起きやすい
  • 周囲との関係が悪化しやすい

行動だけ見ると「反抗的」と受け取られますが、背景に“自尊心の低さ”“不安”“感情調整の弱さ”“過去の経験”が存在することが多い病態です。

素行症(CD)とは

素行症は、反抗挑戦症よりも行動の問題が強く、他者の権利や社会的ルールを繰り返し破る行動が持続する状態を指します。

主な特徴

  • 人を傷つける・いじめる・脅す
  • 物を壊す、所有物を盗む
  • 夜間外出・無断外泊・家出
  • 過度の反社会的行動
  • 重大な嘘を繰り返す
  • 火遊びや危険な行動
  • 強い衝動性

ただし、これらの行動の背後には強いストレス、不安、トラウマ、自己肯定感の低さ、発達特性などが複雑に絡み合っていることが少なくありません。

原因と背景

反抗挑戦章と素行症は、ひとつの原因ではなく、複数の要因が組み合わさって現れると考えられています。

主な背景要因

  • 情緒調整の難しさ(怒りのコントロール、欲求調整の弱さ)
  • ADHD・ASDなど発達特性の影響
  • 環境ストレス(家庭・学校・友人関係など)
  • 注意や衝動性の問題
  • トラウマ・いじめ・不適切な養育経験(必ずしもあるとは限らない)

「親が悪い」「本人が悪い」という話しではなく、さまざまな要因が積み重なってあらわれる状態です。行動の奥にある“つらさ・背景”を理解しながら支えていくことが重要です。

診断・評価

評価には以下を総合します。

  • ご家庭・学校での行動の経過
  • 本人・保護者への丁寧な聞き取り
  • 発達特性(ADHD・ASDなど)の確認
  • 感情調整・対人関係の評価
  • 心理検査・行動評価尺度

診断は、どんな困りごとがあるのかを正しく理解し、その子に合った適切な支援方法を見つけるための大切なプロセスです。

治療と支援

反抗挑戦症・素行症の治療は、行動だけを叱って改善を目指すものではありません。感情調整力を育て、関係性を整え、日常の成功体験を増やす支援が中心です。

心理的支援

  • 認知行動療法(CBT)
  • アンガーマネジメント
  • ソーシャルスキルトレーニング(SST)
  • トラウマケア(必要に応じて)
  • 行動療法による環境調整

家族支援

  • 親子関係調整・コミュニケーション支援
  • 保護者向けペアレントトレーニング
  • 家庭内の対応方針の統一

学校・地域との連携

  • かかわり方の工夫
  • トラブルを減らすための環境調整
  • 個別の教育支援計画(IEP)

薬物療法

必要に応じて気分安定薬、抗精神病薬、ADHD症状や衝動性に対する薬を併用することがあります。

ご家庭でできるサポート

  • 行動の裏にある感情(不安・怖さ・自信のなさ)に目を向ける
  • できたことを具体的にほめて自己肯定感を育てる
  • 一貫したルール・見通しを作る
  • 怒りのピーク時には距離を取り、落ち着いた後に話す
  • 学校や支援機関と連携する
  • 保護者自身のストレスケアも大切にする

よくある質問(FAQ)

これは反抗期や性格の問題ではありませんか?

違います。反抗挑戦症や素行症は、感情調整の難しさ・環境ストレス・発達特性などが背景にある“医療的な状態”です。単なる反抗やしつけの問題ではありません。

叱っても全く改善しません。どうしたらいいですか?

叱責は逆効果になることがあります。まずは「行動の背景の理解」と「環境調整」「成功体験の積み重ね」が重要です。心理支援やペアレントトレーニングが効果的です。

ADHDやASDとの違いは?併存しますか?

発達特性(ADHDやASD)は OD D・CD としばしば併存します。衝動性・対人理解の難しさが行動問題を悪化させることもあります。総合的な評価が必要です。

素行症は将来ずっと続くのでしょうか?

適切な支援があれば改善は十分に可能です。環境調整・心理支援・家族支援がそろうと良い方向に向かいやすくなります。

学校でトラブルが多く、進路が心配です。

早期の支援により、学校での関わり方が改善し、トラブルが減るケースは多くあります。学校との連携が重要です。

家族が疲れてしまい、どう対応すべきかわからなくなります。

ご家庭の負担が大きくなるため、保護者支援も治療の大切な一部です。一緒に対応の仕組みを整えていきましょう。