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限局性学習障害

限局性学習症(SLD)とは

限局性学習症(Specific Learning Disorder:SLD)は、知的能力や教育の機会には大きな制限がないにもかかわらず、読み・書き・話す・聞く・計算などの特定の学習領域において強い困り感がみられる状態です。以前は「学習障害(Learning Disability)」などの呼称が使われていましたが、現在は診断・支援の観点から「限局性学習症」という表現が広く用いられています。特定の学習領域における困難の「出方」はひとりひとり異なり、得意・不得意が交錯していたり、学び方を工夫することで輝ける側面もあります。

限局性学習症の原因と背景

限局性学習症の原因は一つに決まるものではなく、脳の発達や機能の違いが関与していると考えられます。たとえば、ことばの理解や文字の認識、覚える力や集中のしかたなどに、まわりの子どもとは少し違った特徴がみられることが研究でわかっています。また遺伝的な要因が関係している可能性もあり、家族に学習上の困難を抱えた方がいるケースもあります。ただし、遺伝=必ず発症というわけではありません。また、小さいころのことばに触れる機会や学習の経験、周りから受けたサポートなどの環境も、特性のあらわれ方や困りごとの強さに影響すると考えられています。

大切なのは、限局性学習症は「努力が足りないから」でも「やる気がないから」でもなく、生まれつきの特性のひとつだということです。

主な特徴(学びのつまずきとして現れるサイン)

限局性学習症のお子さん・ご本人にみられやすい特徴には、以下のようなものがあります。

  1. 読み(識字)・書き(記述)・話す(説明)・聞く・計算などの特定領域で、同年代と比べて明らかに困難を抱えている
    例:文字を正確・迅速に読むことが難しい/文章を理解・要約するのに時間がかかる/計算の手順を理解・定着させづらい
  2. 知的な能力や普段の学び方に問題があるわけではなく、病気による神経の病気や感覚の異常、練習の機会が少ないことなどでは説明できないにもかかわらず、特定の分野だけがどうしても難しく感じられる状態です。
  3. 学習上の困り感が教育年齢相当以上の期間にわたり持続しており、学業・職業・日常生活に影響を及ぼしている
  4. 学習環境の変化・教育手法の工夫・支援の有無によって、困りごとの程度が変化しうる
  5. 適切な支援や配慮を受けていても、学習内容の習得に時間がかかる
  6. 指導の直後は理解できていても、翌日には忘れてしまう、定着しない

検査・診断・支援について

限局性学習症の診断は、特定の検査だけで決まるものではありません。診断の段階では、ご家族・学校からの聞き取り、学習履歴・学業成績・教室での学習の様子の確認、心理検査(例:読字・書字・計算の検査、知能検査)などを通して、お子さんの「学び方の特徴」を丁寧に把握して総合的に判断します。

小児精神科や発達相談の機関は、お子さんとご家族が安心して生活し、学び、成長していけるように、診断から支援、環境の整え方、学校との連携、保護者のサポートまでをまとめて行う場所です。限局性学習症そのものを『治す』薬はありませんが、学びにくさによる負担を減らし、より適した学び方や環境を整える支援は多数あります。たとえば、一人ひとりに合わせた学習支援や、時間を長めにする、本人に合わせた教材・ICT機器の使用、見て・聞いて・触れて学ぶ多感覚的な学び方の工夫、支援教員・学校・地域との連携するなどの合理的配慮をお手伝いします。

また、注意の向け方や気持ちの切り替え、音や光への敏感さなど、学習以外のところで困りごとがあるときには、それをサポートするカウンセリングや専門的な療育・リハビリも効果的です。

ご家族には、勉強の場面で起こる困りごとの対処法や、家庭での学習環境の整え方、必要に応じて保護者同士の支援につながる情報などをお伝えします。

ご家族にできるサポート

ご家族が日常でできる支援は、お子さんの「安心できる学びの流れ」を整えるうえで大きな力になります。

  1. 学びの場面で「どういうことが難しいか」を一緒に整理し、お子さん自身のペース・方法を尊重する。
  2. 学ぶ時間・教材・環境(音・光・教材の見え方)に配慮する。例えば、集中を阻害する背景音・過度な装飾・見づらい文字などを工夫。
  3. 得意な学び・興味のある分野を大切にし、成功体験・自信を積む機会をつくる。
  4. 保護者ご自身のケアも重要です。支援機関・相談窓口・保護者同士のコミュニティを活用し、一人で抱え込まないようにしましょう。

よくある質問(FAQ)

うちの子は勉強が苦手なだけなのか、限局性学習症なのか、どう違うのですか?

限局性学習症は「努力不足」や「勉強嫌い」ではなく、読み・書き・計算などの特定の学習領域において、脳の特性により「どうしてもつまずきが出てしまう」状態をいいます。周りがどれだけ教えても改善しにくかったり、同年代と比べて極端に時間がかかることが特徴です。一方、勉強が苦手なだけの場合は、学習環境・練習量・教え方の工夫で改善することが多いです。

限局性学習症は知的障害とどう違いますか?

限局性学習症の多くのお子さんは知的能力は年齢相応です。知能(IQ)は十分あっても、「読む・書く・聞く・話す・計算する」など特定の部分だけが大きく苦手として現れるのが限局性学習症の特徴です。

家庭での関わり方が悪かったのでは?育て方の問題ですか?

育て方は原因ではありません。限局性学習症は生まれつきの脳の特性と考えられています。ご家庭の関わり方や努力とは関係なく、多くの研究で「学び方の特性」によるものであることがわかっています。

どんな検査でわかりますか?

読み・書き・計算の力を測る検査、知能検査、学習状況の確認、学校での様子、得意・不得意を総合して判断します。※単一の検査だけで診断できるものではありません。必要に応じて、心理検査や学校との情報共有を行い、丁寧に評価します。

小学校の先生に「様子をみましょう」と言われました。本当に様子を見ていいのですか?

「様子を見る」ことは悪くありませんが、長く待つことでつまずきが大きくなり、自己肯定感が下がってしまう場合があります。早めの評価・支援を行うことで、学習上の負担を軽くできることが多いです。

限局性学習症は治りますか?

限局性学習症を「治す」薬はありませんが、

  1. 教材の工夫
  2. ICT機器の活用(タブレット・読み上げアプリなど)
  3. 読み書き訓練
  4. 個別支援
  5. 学校での合理的配慮
などによって、学習上の困りごとは大きく軽減できます。お子さんに合った「学び方」を見つけることで、強みを生かして力を伸ばしていくことが可能です。

合理的配慮って具体的にどんなものですか?

例えば次のような支援が一般的です:

  1. 読み上げソフトの利用
  2. ノートテイク(代筆支援)
  3. テスト時間の延長
  4. 問題文の音読
  5. 文字の大きさや配色の変更
  6. 計算の補助具の使用
学校や自治体によって内容は異なりますが、お子さんの必要に応じた調整をお願いできます。

限局性学習症だと将来が心配です。大人になっても困りますか?

困りごとが残る場合もありますが、自分に合った学び方・仕事の進め方を身に付けることで、社会で活躍されている方も多くいます。限局性学習症は「能力の低さ」ではなく、「学び方の特性」です。適切な支援を受け、強みを伸ばすことで十分に力を発揮できます。

家庭ではどんなサポートをすればいいですか?

おすすめの関わり方は以下です:

  1. 苦手分野を責めず、「どう工夫すればやりやすいか」を一緒に考える
  2. 読みやすい教材・大きい文字・音読などを活用
  3. 得意なこと・興味のある分野を大切にする
  4. 成功体験を積める課題・環境をつくる
  5. つまずいた時には早めに専門家へ相談する
家庭でのサポートは、お子さんの自信と意欲を支える大きな力になります。

どのタイミングで受診すればよいですか?

以下のような場合は、早めの受診がおすすめです:

  1. 読み書き・計算だけが極端に苦手
  2. 宿題がなかなか進まず、終わるまでに時間がかかる
  3. 学習のことで涙や癇癪が増えた
  4. 学校から指摘があった
  5. ご家族が勉強を教えていて勉強を教えてもなかなか身につかないと感じる

適切な診断と支援を早期に行うことで、負担の軽減と学習の伸びにつながります。